なぜ、沖縄県において、賃貸住宅は新築住宅の7割を占めるのか?

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 前回では、沖縄県における住宅着工数(総数)の30年間を振り返りました。

今回は、そのなかでも貸家(賃貸用住宅)の着工数にフォーカスして、推移を検証してみましょう。

沖縄県は、新設される住宅の半数以上が貸家となっています。

図2
都道府県別 着工戸数において貸家の占める割合(2016年)|資産活用総研 大鏡建設

図2は、2016年の都道府県別の住宅着工数のうち貸家の占める割合を示したもので、これをみると、沖縄県がダントツに多いことがわかります。

全国平均では43%ですが、本県では69%と1年間に新設される住宅のうち約7割が賃貸用に供されているということになります。

 逆に、岐阜、和歌山県などでは、新しく建てられる住宅のうち4つに1つだけが賃貸用の住宅で、大きな違いがあります。

図3
沖縄県貸家着工戸数の推移|資産活用総研 大鏡建設

では、1988年から2016年までの約30年間の貸家の着工数を見てみましょう。

この間で最も少ないのは1992年で5241戸、続いて1998年の5464戸となっています。
バルブ崩壊直後と消費税増税(3→5%)の翌年です。

逆に多いのは、2006年の11734戸で、1992年の2倍以上となっています。
1998年に底を打ってから順調に右肩上がりが続き、ピークが2006年でした。返還地に様々な賃貸用物件が建てられた時代でした。この間は、全国的にも右肩上がりに賃貸住宅が建てられますが、本県の上昇基調はより顕著なものでした。

再び増えるのは、いまの不動産活況が始まった2013年からで、2016年には11135戸とこの約30年では2番目に多い年となりました。

 では、なぜ本県では新築住宅のうち7割もが賃貸住宅なのでしょう。

いくつか理由はありますが、

1. 「賃貸住宅に暮らす世帯は何割?」で述べたように、賃貸暮らしする傾向が強い。文化といってもいいかもしれない。

2. 中心部への集中(職・住)が進んでいる。→不動産価格の上昇をもたらす
よく、「年収が低いから、本県では賃貸住宅暮らしが多い」という方がますが、図2で見たように、県民所得が本県と変わらないような低い県でも、賃貸住宅の比率は低調です。

3. 地主が多い。返還地には、多くの賃貸用住宅が建てられる。

これに加えて、
4. 世帯数の増加が見込まれて、今後も賃貸需要の増加が見込める

このように、「文化的な側面がベースにあり、需要と供給が揃っている」、ということが、沖縄県が賃貸住宅建築率において、全国圧倒的1番の理由だと思います。

沖縄県がこの割合が1位というのは、おそらく、これから数十年続くものと思われます。