全国と沖縄県内の2016年の不動産市況・土地活用市況を振り返る

shisan_2016a.jpg

土地を所有する方が賃貸住宅等を建てる際に建築資金(その他付帯施設含む)を融資するのが、アパートローンと呼ばれるものだ。
土地活用を行う多くの方が、各種金融機関を通じて利用されるローンのことだ。

 金融機関関係者と話していると、どうも、12月に入り審査が厳しくなっているようだ。また、メディアでも土曜の報道が見られはじめている。日経新聞2016年12月14日朝刊の見出しには、「アパート融資、過熱警戒。金融庁、節税効果などを調査」とあった。

日銀のデータによると、
2016年9月末時点の、主にアパートローンと思われる「個人による貸家業」の貸出残高(国内銀行、銀行勘定ベース)では、22兆76億円となっており、2015年の春先から急に伸びているのが実態だ。

 建築数でこれを検証すると、確かに新築住宅着工戸数の貸家も2015年は前年対比プラス4.6%(37.8万戸)、2016年は、前年対比10.9%(10月末データ)となってリーマンショック後では最も多く建てられている。
 
 銀行、特に地方銀行や信用金庫などは、優良貸出先の減少にともなう融資の伸び悩みに加え、マイナス金利の影響で収益環境が悪化している中、数少ない健全な貸出先としてのアパートローンに力を入れている現状が見え隠れする。こうした状況下で、冒頭に書いたように、金融庁が警鐘を鳴らしているということにつながっていくのだろう。

 アパートローンは土地活用として賃貸用物件を建てる際の建築費用の融資を受けるもので、ローン借り主(オーナー)は、賃料収入をローンの返済原資とするのが一般的なパターンだ。
賃料収入が返済額を下回ると、例え節税につながるとしても、マイナス分は持ち出しとなってしまう。金融庁はこうしたオーナー負担が大きくなることを未然に防ぎたいという意向だ。 
逆に、懸念されるのは、健全な収支計画を立てている融資申し込みについても、金融機関による急な融資意欲減退に巻き込まれないかということだ。

 何度も述べているように、賃貸経営においては、賃貸需要が一定水準以上保つことが予想される場所に適切な賃料設定を行うことが必須だ。
そのうえで、無理のない収支計画を立てる。そうすることで、その計画に沿ってアパートローンの返済を滞りなく行うことができる。この当たり前のことを行えば、大きな問題とはならない。

ますます、このような無理のない提案を行うメーカーに依頼することが求められるだろう。

 2016年はどんな1年だっただろうか。経済全般・不動産投資・土地活用といった観点から振り返ってみよう。

まずは、全般的なところから。

2016年の不動産市況に影響があったであろうことを順にあげてみると、
1月下旬:日銀のマイナス金利政策発表 →実施は2月中旬から
6月初旬:消費税増税再延期決定
6月下旬:イギリスEC離脱国民投票可決 →実際の離脱はこれから議論
11月上旬:アメリカ新大統領にトランプ氏選出

などが、大きな出来事だった。

特にマイナス金利政策は、不動産市況に大きな影響があった。

日銀はかねてからインフレ誘導政策を行い、投資意欲が高まるムードを作り上げてきた。インフレによる実質的な現金価値の下落は、現預金で資産を持つことにたいしての不安をもたらし、それは不動産への投資が活性化する源となった。また、日銀による国債の大量購入を行うことで、銀行の貸出金利低下を誘導し、それは不動産投資の活性化につながった。

しかし、景気がよくなったという実感が広く国民に浸透することはなく、さらなる景気刺激策としての「マイナス金利」策が実行されることとなった。その結果、実需住宅用不動産(実際に購入者が住むための不動産)価格は横ばいかやや弱含みだったものの、一方で投資用不動産の活況は続くといった、これまでにあまりない傾向が見られた。不動産市況に若干の陰りが見え始め2016年の初めに、この政策を行うことで、不動産市況全体的には大きな低下にならず、「横ばい」とう状況に留まったのだろう。

2015年の秋に発覚した横浜のマンションの杭の問題あたりくらいから、「そろそろ、不動産市況に陰りか?」という雰囲気が漂っていたが、2016年の1年間を振り返ると、新築マンション・中古マンションとも、勢いは止まったものの、大きな下落が見られるという雰囲気ではなかった。

 沖縄県における住宅地の2016年の公示地価(価格時点2016年1月1日、公表2016年3月)は、昨年対比+1.6%と震災からの復興エリア(福島・宮城)を除けば、都道府県別で日本一の伸び率だった。沖縄県においては那覇市周辺エリアでの開発が進んでいる。特に、豊見城市豊崎エリアは商業施設だけでなく、マンション、戸建住宅の開発も活発で、街の成熟感が出てきた。

図1
都道府県別 住宅地における公示地価の増減率(2016年)

2017年がどんな不動産市況になるかという予想で、気になるのは、金融庁~銀行間でのやり取りだ。具体的には、不動産融資の総量規制の動きが最大のポイントとなるだろう。この件次第では、ミニバブルの崩壊時期と同じく(この時はリーマンショックと総量規制が重なった)、大きな転換点になるかもしれない。これについては、別途報告したい。