賃貸住宅のペット・騒音・ゴミ問題。法律ではどう決まっているのか?

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第4回目のコラムでは,「賃貸借契約期間中の諸問題」のうち,後半部分として,賃借権の譲渡・転貸,ペット・騒音・ゴミ問題について説明します。

 

 

建物の貸主,オーナー様にとって大切な資産である土地や建物。この人だからと安心して貸したのに,いつの間にか知らない人が建物に住んでいる。このように,賃借権の譲渡・転貸,相続について,まず説明しましょう。

 

借地人は貸主の承諾がなければ,賃借権を譲渡,転貸することはできません(民法612条1項)。多くの賃貸借契約書にも記載されますが,賃借権の無断譲渡,転貸は賃貸借契約の解除事由になります。

では,賃借権の譲渡がされた場合は、いかなる場合でも無断譲渡・無断転貸として貸主は賃貸借契約の解除ができるのでしょうか。

 

判例上,賃借権の無断譲渡,無断転貸は,賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合には解除できないとされています(最判昭和28年9月25日民集7巻9号979頁)。

例えば,離婚による財産分与として,地上建物とともに土地の賃借権を配偶者に譲渡する場合は,地主の承諾は不要と考えられます。また,借地人である親が,借地上に所有する建物を同居する子と共有していた場合に,建物と借地権の共有持ち分を子に譲渡したときは,借地の利用及び賃料支払等の実質的関係に変化がなければ,借地権の持分譲渡につき地主の承諾は不要と考えられます。

なお,借主が死亡した場合,法律上当然に借主の地位が相続人に相続されます(民法896条)。したがって,貸主の承諾なくても,相続人が借主として使用収益することができます。

 

最近では,賃借人によるペットの飼い方,ごみの捨て方,入居者同士の騒音トラブルも良く聞きます。建物オーナーとしては,これらの問題をどう予防すべきか,どう対処すべきでしょうか。

 

 最近はペットブームの影響もあり,ペット飼育禁止条項は設けずペットの飼育を容認している賃貸マンションも多くなりました。

では,ペット飼育禁止条項を設けない場合に,建物のオーナーとして注意が必要なのはどんな点でしょうか。

ペットの飼育を容認するとしても,ペットの種類や飼育方法によっては建物の汚損・毀損,近隣住民への迷惑が生じる可能性はありますので,ペット飼育に関するガイドラインを設けて,飼育できるペットの種類や大きさ,共用廊下等では飼い主がペットを抱いて歩く(リードで繋いでいても他の住民に飛びかかる可能性があるので),糞尿の後始末を徹底する,など取り決めをしておくことが重要です。

ペット飼育を容認していた場合でも,通常の飼育方法を逸脱して当事者間の信頼関係を破壊していると認められる場合には,賃貸借契約の解除も認められます。

 

入居者の迷惑行為の中でもっとも問題になるのが騒音です。

建物賃貸借契約書には「大きな音量でテレビ,ラジオを視聴,楽器の演奏等をしてはならない」というような騒音禁止条項を設けていることが多いです。

とはいえ,マンションやアパートなど共同住宅であれば,多少なりとも足音やテレビ,会話の音,楽器の音などが生じることは避けられません。

したがって,騒音については,社会生活上受忍すべき限度(受忍限度)を超えている場合に騒音禁止条項に違反するといえます。

受忍限度の範囲内かどうかについては,騒音の大きさ,種類,時間帯,頻度,騒音の発生が生活上不可避かなどの要素で判断します。

 騒音問題が生じた場合に,賃貸人としては,入居者から騒音被害の申し出があった場合には適切な対応をとっておかないと,建物を使用収益させる賃貸人としての義務を怠ったとして債務不履行責任を負う場合がありますので注意が必要です。

 

賃貸人としては,騒音の苦情があった場合には,入居者全体に対して生活騒音に対する注意喚起する掲示や文書配布をする,騒音の発生源である入居者に対して個別に文書で通知する,それでも改善しない場合には賃貸借契約の解除を求めていくことが必要です。このような対応をする前提として,騒音被害の内容について録音や録画をしておくことが重要です。

 

一時マスコミで話題になったような,ゴミを室内に溜め込んで悪臭を放っているなどのケースでは,入居者が建物の用法遵守義務に違反しているとして賃貸借契約の解除が認められます。ゴミ出しのルールを守ることも入居者の建物用法遵守義務に含まれると考えられます。

したがって,ゴミ出しルールを守らない入居者に対しては,ルールの遵守を周知し,それでも改善されない場合には解除ということになりますが,そのためにはルール違反の内容・程度が問題になりますので慎重な判断が必要です。